喀痰誘発研究会 設立趣旨

 喀痰検査は、呼吸器疾患の診断ならびに病因研究において有用とされ、結核、肺炎、ニューモシスチス等の呼吸器感染症の診断や肺癌のスクリニーグ、さらに喘息、
COPD をはじめとする種々の呼吸器疾患の研究において重要なツールの一つであります。

しかしながら、呼吸器疾患の患者は、喀痰を自発的に喀出することができない場合も少なくなく、感染力の強い感染症などにおいて診断確定が急がれる場合や、高い診断精度が求められる場合に大きな障害となっています。

 今までは高張食塩水吸入法以外に選択肢は少なく、喀痰誘導は一般には普及していませんでした。検査精度の保証の観点からも、信頼性が高く、簡便で安全な喀痰誘発法の普及が求められています。

 去る2002年、新たな喀痰誘発の方法が、米国にて発明されました。メディカルアコースティックス社(Medical Acoustics LLC)のホーキンス氏(Mr.Hawkins)により発明されたラングフルート(Lung Flute)は、小型のたて笛状の器具です。フルートを吹くように器具内に口から息を吹き込むことで、1622Hz、出力110115dBの音波を発生し、この低周波の衝撃波は、理論的には気管・気管支分枝を下降して肺深部に到達し、気管・気管支分泌物および線毛を振動させ、これによって下気道の粘膜線毛クリアランスを大幅に促進することができ、その結果、自発的な痰の排出を促します。

 この機器は、すでに米国では喀痰誘発のための診断用機器として2006年にFDAの認可を得ており、日本国内でも2008年に特許取得済みであり、販売を開始するところです。

 2006年末より、東京都立府中病院呼吸器科(現東京都立多摩総合医療センター呼吸器科)において行われた結核患者(疑いを含む)を対象とした臨床試用では、その場で痰を喀出できない患者のうち80%以上においてこの方法による喀痰誘発により採痰することが可能であったという結果を得ております。この結果は既に2007年アジア太平洋呼吸器学会、2008年日本呼吸器学会および、2008年ヨーロッパ呼吸器学会にて発表されております。

さらに、この器具を用いた「喀痰誘発」は、診断用途のみならず、患者の気道閉塞関連疾患の症状を緩和し、術後のリハビリテーションや、各種呼吸器疾患の治療およびQOL改善にも寄与すると予想されています。「喀痰誘発」の分野が新たに治療への応用の方向に広がっていく可能性も考えられます。

 このように簡便かつ安全に使用できる喀痰誘発器具の登場によって、「喀痰誘発」の手段が治療への応用の可能性を含めて、将来呼吸器疾患診療の向上に貢献すると思われますが、そのためには今後多くの基礎的及び臨床的な研究による検証が不可欠です。

 当研究会は、「喀痰誘発」の分野で、新技術に対する研究、評価を行い、最新の情報を共有して、呼吸器疾患における新たな診断及び治療の方法を開拓し、医療分野ひいては社会に貢献する事を目的として創設いたしました。

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東京都府中市武蔵台2-8-29 都立多摩総合医療センター呼吸器科医局内
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